ロボットデリバリー協会

「2023国際ロボット展」におけるセミナー内容のご紹介

2023.12.11

2023年11月30日(木)に、「2023国際ロボット展」において、本会主催でセミナーを開催しました。
開催時刻:2023年11月30日(木)15:30-16:10
タイトル:道交法改正により本格化するロボットデリバリー産業のこれから
登壇者:中野剛志(経済産業省物流企画室長)、佐藤知正(ロボットデリバリー協会代表理事)、牛嶋裕之(ロボットデリバリー協会理事、モデレーター)

牛嶋理事:皆様、本日はロボットデリバリー協会のセミナーにお越しいただき、誠にありがとうございます。我々ロボットデリバリー協会は、去年の2月に発足した団体で、日本におけるロボットデリバリーの普及を推進しています。今年の4月には改正道路交通法が施行され、ロボットが公道を走行するためのルールが整備されました。
今日は、自動配送ロボットの業界がこれからどう発展していくのかや、改正道路交通法の内容に関しても、電動キックボードは有名ですが、ロボットの公道走行ルールについてはまだまだ周知が広がってないと思いますので、ご説明させていただきたいと思っております。
まずはロボットデリバリー協会の佐藤代表理事、経済産業省の中野物流企画室長から、それぞれのお取組に関して説明をいただきつつ、最後は3人でパネルディスカッションを行うことで、よりこの業界に関する理解を深めていただければ幸いです。
それでは、佐藤代表理事からよろしくお願いいたします。

佐藤知正 ロボットデリバリー協会代表理事

佐藤代表理事説明資料

佐藤代表理事:佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。ロボットの世界で50年以上研究開発を行なってきました。なぜ日本がロボット大国になったのか、というところからスタートして、日本がデリバリーロボットの社会実装大国になるための方策を議論させていただきたいと思います。

まず、なぜ日本が産業用ロボット大国になることができたかということですが、1980年のロボット元年の前に、ある産業用ロボットメーカーがどのような活動をされたのかを参考にご説明します。

最初に、実験室で技術をつくる段階があります。ある産業用ロボットメーカーの場合は、アメリカのスタートアップから産業用ロボットの図面を導入されて、その後自社で内製化、2〜3ヶ月の長期運転をしたところ、歯車などが壊れ、時々暴走するので柵の中に入れないといけないということになるなど、技術のベースの議論を進められました。その後、社会実験の段階では、自動車会社や電機会社の工場の片隅に産業用ロボットを置かせていただいたそうです。工場にはとても厳しいエンジニアがたくさんいらっしゃいますから、作業能力、信頼性、安全性などに指摘を受け、改善につぐ改善を重ねたそうです。このように現場の拒絶反応を小さくした段階で、いよいよ商品化の段階、つまりビジネス段階に入りました。産業用ロボットのビジネスモデルは、「手先を売らない」ということでした。手先の部分(ハンド)を販売すると、工場の製品の都合が色濃くはいってくるので、製品としての手離れが悪くなるということです。このように、手元だけを売る(腕の部分を販売するという)ビジネスモデルにして、溶接、塗装などの過酷な環境のところや、組み立てという市場の大きなところに狙いを定めて、ユーザーの中に入っていきました。それと軌を一にして、産業化の段階としての、ロボット工業会が設立され、様々なメーカーが参加した業界団体とともに発展することを目指したというわけです。 日本が産業用ロボット大国になれた理由を一言で言うと、技術熟成力です。徹底的に改善に改善を重ねて、マチュアな(熟成された)ものにして工場で使えるようにした。農耕民族の日本人の得意なところで、デリバリーロボットにおいても、この成功体験は活きるのではないかと思います。

実験室と社会実験の段階は、「ロボットは役に立つのだ」という信念があって、それでロボットの技術を何とか作ろうという時代でした。そこには、工場の片隅に置かせていただいて、とにかく使えるようにするという企業努力がありました。その後、投資が入り、業界の中で売っていくという、「お客様作り」と「社会作り」が進められ、結果的に「三方よし」になりました。 1980年はロボット元年ですが、統計によるとその後20年間は、世界において産業用ロボットの9割から7割を日本が作り、日本でも使いますので、ますます磨きがかかりました。

では、日本はデリバリーロボットの社会実装大国になるかどうか、についてお話ししたいと思います。

技術については、産業用ロボットの時代はマイコンみたいなものしかありませんでしたが、今は非常に豊かなコンピューティングパワー、クラウドが使えるようになっております。エッジコンピューティングやセンサーも非常に進歩しているので、技術は結構いいところまで来ているのではないかと思います。

社会実験についても、経産省からも支援いただき、十分できるような時代になっています。こう考えると、投資が拡大し、ロボット元年を迎えられるのではないかと思っています。産業用ロボットの場合は、実は1980年の4〜5年前から投資が行われています。ちゃんとした投資をした会社が今、大きなロボットメーカーとして残っています。 さらに、物流においては、「フィジカルインターネット」とう考え方があります。将来的には必ずこういう方向になると思っていますが、このような先導概念も存在しておりますので、ロボットが役立つという信念を持ってこれからの活動を続ければ、必ず投資の時代を迎えることができます。ぜひ皆様方のお知恵とご協力をいただきたいと思っています。

1980年は、産業用ロボットの大きなユーザーがいて、ロボットメーカーにロボットを持ってきてもらい、ロボットを改善するという、一言で言うと「指導型」の活動になっていました。 サービスロボットは、そうではなくて、ユーザー、SIer、メーカーが力を合わせて歩み寄らなければいけません。とても難しいですが、国からの「呼び水」をぜひうまく使いながら、指導型とは違った「歩み寄り」のやり方で発展させなければならないと思っています。

産業用ロボットの場合は、実験室段階から始まって社会実験段階、そして商品化段階、産業化段階だったわけですが、今技術はマチュアになっていますので、まず社会実装を先行させ、そこで出てきた問題点を解決し、潰していけば、「死の谷」などの壁を乗り越えられるのではないかと思っています。「産業は学問の道場である」というスタンスで頑張れば、発展が得られるのではないでしょうか。ご清聴ありがとうございました。

牛嶋理事:ありがとうございました。次に、中野室長お願いいたします。

中野剛志 経済産業省物流企画室長

中野室長説明資料

中野室長:経済産業省の中野です。 この手の新しいイノベーションでは随分早いと思うのですが、2019年に官民協議会を立ち上げて、2020年に公道実証実験の制度整備が進み、ロボットデリバリー協会も立ち上がりました。2022年4月19日に道路交通法の一部を改正する法律案が可決され、今年の4月1日から道路交通法の改正法が施行ということで、低速小型のものに関しては既に公道を走れるという、非常に早いスピードで物事が決まってきました。

これまで経済産業省では、技術開発支援や制度整備の推進に取り組んできましたが、自動配送ロボットの認知度がまだまだ低いということで、社会受容性の向上にも取り組む必要があり、新規参入事業者のための手引きの策定を進めているなど色々手を打ってきました。 昨日(11月29日)成立した補正予算で、総額55億円のうち1桁前半億円ぐらいを自動配送ロボットのサービス側の実証に使おうと考えており、大企業・中堅企業は1/3の補助率、中小企業であれば2/3の補助率で考えています。

今回の補正予算でやろうとしている事業は、サービスモデルを作るためいう位置づけで、10台など複数台を実際に運用し、運用しながらニーズを掘り起こしていきます。もちろん克服すべき新たな課題は見つかってくると思いますが、先ほど佐藤先生の資料であったような「死の谷」を超える橋を渡すような形でこの予算を使うことを考えています。実装の際の課題やサービスの掘り起こしを、サービス側でやっていくということです。ラーニングバイユージングという言葉がありますが、この手の新商品は使ってみて学んでいくというところが大きくて、それを今回の予算で場を提供したいということです。今後、自動配送ロボットの飛躍のきっかけとなる可能性があると思っております。

低速小型が公道で走れるようになり、いよいよ死の谷超えるぞという段階で、その先も手を打っておくということで、次は中速中型です。制度的な問題もあり、ハードルは高いのですが、配送能力が高くなりますので、検討を開始していきたいと考えております。

牛嶋理事:ありがとうございました。では私から、ロボットデリバリー協会の概要と、改正道交法の内容に関してご説明させていただければと思います。

牛嶋裕之 ロボットデリバリー協会理事

牛嶋理事説明資料

ロボットデリバリー協会は、「いつでも どこでも ロボットが安全に届けてくれるより便利な社会の実現」を目指しております。ECやQC、フードデリバリーなどが拡大する一方で、日本は人手不足ですので、新たな配送の担い手として貢献をしていきたいと考えております。 自動配送ロボットは、自動で走行して荷物を配送しますが、小さくて軽くて、ゆっくり走行するので比較的安全なモビリティです。協会は、昨年の2月に8者で発足しましたが、現在の会員数は31者です。ロボットデリバリーを普及させ、人々の生活の利便性を向上させていく、さらには、今回の改正道路交通法に基づく機体の安全性の審査も役割として担っております。

現在は、このような会員が参加されておりまして、会員は随時募集しておりますので、皆さんもぜひ入会をご検討いただけたらと思っております。

改正道交法の内容ですが、自動配送ロボットは、「遠隔操作型小型車」と定義をされました。要すれば、遠隔から操作をする小型の車です。遠隔操作となってはいますが、自動走行も可能ですし、1人の遠隔操作者が複数台のロボットを同時に遠隔監視しながら、各ロボットが自動走行する、そのようなオペレーションも認められております。遠隔操作型小型車と言いつつ、ロボットによる無人化・省人化を実現することが可能なルールになっています。
遠隔操作型小型車は、長さ120センチ、幅70センチ、高さが120センチ以内ということで、電動車椅子と同じような大きさです。最高速度は時速6キロメートルで、早歩きぐらいですが、これも今まで電動車椅子が歩道で認められてきた最高速度と同じです。
遠隔操作型小型車は、非常停止装置を備えなければいけません。何かあったときに、周りの人もしくは警察官が押したら止まるというような機能が求められていますし、遠隔操作型小型車であることを示す標識もつける必要があります。
歩行者の方々が歩行できる道路を、歩行者と同じようなルールで走行できるということになっておりますが、歩道は歩行者のものですので、歩行者に進路を譲らなければならず、あくまでロボットよりも歩行者が優先です。
今までは、公道走行をするためには、2020年に整備された公道実証実験手順に従って、基準緩和認定と道路使用許可が必要でしたが、今回の法改正によって届出制となりました。
届出にあたっては、ロボットの使用者、走行させる場所、遠隔監視をする場所などを提示する必要がありますし、協会の役割でもありますが、団体による審査合格証も届出に添付することとなっています。 改正道交法ではロボットの運行に関するルールが定められていますが、誰がロボット自体の安全性を担保するのかというときに、我々ロボットデリバリー協会が、安全基準とガイドラインを作ってまいりましたので、それに基づいて審査をさせていただいて、審査合格証を交付するという立て付けになっております。今回非常に速いスピードで制度整備をしていただきました。産業界としても安全をしっかり担保する責務があるということで、協会がこれまで安全基準や審査制度の構築を進めてまいりました。

安全基準は、遠隔操作型小型車の機体の安全性、ガイドラインはその機体をどのように安全に運行させるかを定めております。ロボットについてリスクアセスメントをしていただいて、それに基づく必要な安全対策を講じているかを審査することになっております。 機体に関しては安全基準に基づく審査を行って合格証を交付いたします。合格証交付の際の条件として、ガイドラインに基づいて安全に運行するということになっております。その合格証を添付して、都道府県公安委員会(実際の窓口は地元の警察署等)に届出をしていただきます。

最後に、ロボットデリバリーの将来像ですが、ロボットデリバリーの役割は大きく三つあると思っています。
一つ目は、人手不足の中で配送の担い手を供給することです。デリバリーのサービスがどんどん盛り上がっているなか、配送の担い手が不足していますので、そこをロボットで埋められないか。二つ目は、ロボットならではの優れた配送を提供できるのではないか。正確な時間に配送する、商品の品質を保って配送するということが考えられます。三つ目として、今までの人の配送の代替や、人より優れた配送を提供するということだけでなく、ロボットデリバリーが普及すれば、それをインフラとして新たなサービスが出てくるという可能性もあるのではないかと考えております。 私からの説明は以上とさせていただき、ここからはより理解を深めるためにパネルディスカッション形式で議論をさせていただければと思います。

牛嶋理事:先ほど佐藤先生から、産業用ロボットの黎明期との重なりについて言及がありました。我々も大きなロボット産業の一角となるよう発展していきたいと考えていますが、産業用ロボットの黎明期を踏まえて、どのようにロボットデリバリーが普及していくべきか、佐藤先生のご見解をいただければと思います。

佐藤代表理事:産業用ロボットが出てきた時期は、高度成長期ですが、ニーズがたくさんあって働き手が少なかったという意味での“人手不足”の時代でした。今はそうではなくて、本当に働き手がいなくなっているっていう意味での“人手不足”で、これがちゃんと解決されないとQCもECも成り立たなくなります。同じ“人手不足”であっても全く様相が異なり、もっと深刻で、ロボットの役割がさらに大事になっています。

ロボットは、計算機の発達段階に概ね比例して発達します。産業用ロボットは、8、16bitマシンで十分でしたが、今は32、64bitと発達し、クラウドが使えるようになってきました。配膳ロボットも日常で目にするようになりました。ああいうロボットが食堂に導入されたときに、本当にぶつからなく、大丈夫かなと心配しましたが、技術的にも非常に進歩しマチュアになっています。

次に、社会実験をしてみて大丈夫だ、という感覚を得ることが大事です。経産省の実証プロジェクトは、非常に大事な時期に価値ある活動を推進されていると思います。ここから先は、使おうという意志のあることが重要で、決断が必要です。産業用ロボットの場合は、1980年のロボット元年の4年ぐらい前から投資が行われています。そこで量産化ができて、コストも下がったし、信頼性もかなり上がって、その後20年間、日本の国内で徹底的に使いこなしました。デリバリーロボットは、今はちょうどその時期に差し掛かっているので、非常に面白い時代になっていると思っています。

牛嶋理事:ありがとうございます。今、佐藤先生から産業用ロボットの黎明期を参考に、ロボットデリバリー業界も発展していくのではないか、とのコメントがございましたが、中野室長ご見解はいかがでしょうか。

中野室長:産業用ロボットの時代の振り返りというのは、非常に参考になります。佐藤先生がおっしゃったように、1980年がロボット元年で、1976年頃から積極的な投資が産業界から始まりました。それで今日のようなロボット大国があるのですが、実は時代背景が似ていると思っています。なぜ1976年にそのような投資が始まったのかというと、もちろん当時も人手不足でしたが、もう一つ大きいのはオイルショックです。1973年に第一次、第二次は1978年で、第一次オイルショックがものすごい大きなインパクトがありました。コスト高の中で、省エネや合理化を進めなくてはならない時期であり、それが世界の大きな変化と捉えられていた時期です。

今、日本は40年ぶりと言われるインフレを経験しています。食料もエネルギーも高くなり、人手不足とインフレは、まさに1970年代の半ばと非常によく似ています。佐藤先生がおっしゃったように、当時もコンピューティング能力が産業用ロボットに適用できるように発達して追いついてきました。今も自動配送ロボットに適用できるセンサーやAIなどが発達してきました。これがつい10年前とかだと自動配送ロボットは難しいです。関連産業、とりわけITデジタルの産業、コンピューティングの産業が一緒に発達していくというタイミング、インフレや人手不足など社会的な状況のタイミングが産業用ロボットの時とそっくりです。

大きな違いは、1970年代の半ばでは、産業GDPに占める製造業の割合が今より高かったことです。その後、サービス産業化が起き、今はサービス産業が大きいわけですが、そうすると今度はサービス産業でのロボット活用になるはずで、まさに自動配送ロボットということになります。民間企業も、そろそろ自動配送ロボットに投資をしていくというタイミングではないのかなと思います。人口減少や少子高齢化は、割と確度の高い未来で、デジタル化の発達も確度の高い未来ですので、今よりも来年、来年より再来年、年を経るごとに自動配送ロボットのニーズが高まっていきます。ニーズが明らかなときには、目端の利く企業は既に参入していますから、そのときに参入を決断しても遅いわけですけれども、今このタイミングで先んじていろいろノウハウを蓄積していけるかどうかが重要です。それは技術的なノウハウだけではなく、商品化に繋がるときにはサービス的なノウハウの方が強いので、そういったものをやるタイミングであると思います。制度面の整備は、政府としてやることはやりました。加えて社会実装の予算が措置されますので、いよいよこれに乗っかって、民間の方でも投資などをお考えいただきたいです。

牛嶋理事:ありがとうございます。まさにロボットデリバリーの普及に向けて、制度は整い、予算をつけていただいた、かつ技術に関しても、ちょうど産業用ロボットの時代にはなかった技術が出てきて、ロボットデリバリーというものを可能にしているというようなご指摘もございました。佐藤先生はロボットの研究者でもいらっしゃいましたが、何が公道での走行を可能にしたのかといった、ロボットデリバリーの技術的な点に関してご知見いただけますでしょうか。

佐藤代表理事:実は私は、ビジョンの研究もやっておりました。いろんなところに見学に行ったりして、どうやったらビジョンは働くようになるのかと考えてきました。ところが、ディープラーニングが出てきて、ニューロンネットワークで学習をすると、非常に汎用的にいろんな領域で物が認識できるし、その結果に基づいてロボットを実用的に動かせる時代になっています。ロボットコンテストで優勝しようと思うと、ディープラーニングがロボットシステムに組み込まれていないと入賞すらできない時代になっています。

さらに、生成AIが出てきて、非常に大きなインパクトを持つと思っています。私は昔、福祉ロボットの研究をしていました。部屋の中にたくさんセンサーを置いて、人間がどういうふうに生活しているのかを計測する。センサーのデータから特徴イベントを見出し、その特徴イベントの結びつきを自分で学習をして、その結びつきをうまく利用して人への支援を実現しよう、というアプローチをしていました。しかし、日常生活には、あまりの数多くのイベント、そしてイベントの結びつきがあるので、なかなかうまくいきませんでした。

その一つの応用例として、次のようなシナリオの実現を目指しておりました。その当時、我が家では、犬を飼っていました。その犬を見ていますと、夕方に家内が靴下を履き始めると、わんわんと吠えるんです。それは、散歩に連れてくれることが分かっているからです。そこで、ChatGPTに、「今4時になっています。女主人ががタンスをあけ靴下を履き始めました。犬は何が期待できるでしょうか」と入力をしてみたら、「夕方になったら散歩に連れて行ってもらえることが期待できる」ということをちゃんと出力します。要は、ある枠組みシナリオが学習されていると、うまい入力が行われることで、その枠組みシナリオに沿った出力、この場合は、散歩に行けるという期待が出力として予想できるようになっているということです。非常に面白い時代になってきました。サービスは、同じことが繰り返されることも多いわけですから、新しいサービス実現への技術のベースができていると思っています。このように、ディープラーニングや生成AIの技術は、サービスロボットを非常に大きく転換する時代になっています。

昔は、AIの言語を使いこなす必要がありましたが、ChatGPTの場合は、日本語で入力すると日本語で答えてくれます。うまくやれば、非常にうまい使い方ができます。こういう技術をうまく使いながら、一歩踏み出すことが大事かなと思っています。

牛嶋理事:ありがとうございます。先ほど公道では歩行者優先とお話ししましたが、歩道で人とロボットが共存するために、インタラクティブなAIを活用することも考えられると思いました。そういった新しい技術を使いながら、日本のロボットデリバリーが普及し、世界でも普及していけばと思うところですが、最後に中野室長から、ロボットデリバリー業界に関わるメーカーやサービスサプライヤーに対する期待を伺えますでしょうか。

中野室長:もちろん、ビジネスベースでやっていただくことですが、人手不足や人口減少により、地方において買い物が困難であることなどは、社会課題として大きな問題になってきています。BtoCのラストワンマイル配送サービスというのは、消費者としては便利ですが、事業者としては非常にコストがかかりますよね。少量のものを1人で運んで、大抵帰りは空ですから、非常にコストがかかる。そこを何とかしないといけない時代になっていますが、いかんせん労働力不足です。これは日本全体の問題であり、ここがうまくいかないと経済が回らない、社会が回らなくなってしまいますので、政府としては非常に危惧しているところです。ただ、社会課題があるということは、ビジネスチャンスがあるということです。

政府として制度整備や予算措置はできますが、実際に予算を使って、どんなサービスがありうるのか、使いながら学んでいき、どういうふうにしたらコストが削減できるのか、技術的あるいはビジネス的なアイディアを出すことは、一番役人が不得手なところです。

枠組みは作りましたので、ぜひ皆さんのお知恵を結集していただきたいと思います。イノベーションというのは、人間が想定してないものを目指すことですから、我々の想像を超えたアイデアを出していただけることを非常に期待しています。

牛嶋理事:ありがとうございました。ぜひ皆様もロボットデリバリー業界への参入と、ロボットデリバリー協会への入会をご検討いただけたらと思っています。本日はご清聴いただきましてありがとうございました。